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「あちらにいる鬼」

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「あちらにいる鬼」(井上荒野著 朝日新聞出版刊)

直木賞作家の井上荒野が父、井上光晴と瀬戸内寂聴の恋愛関係と母との三角関係を描いた小説。

私は井上光晴の本は読んだことがないが瀬戸内寂聴の本は若い頃によく読んでいた。まだ瀬戸内晴美という名前で書いていた頃で、不倫の話がよく出てきた。若かった私には刺激的な内容だったが、知られざる世界を覗きたくて熱心に読んだ覚えがある。

瀬戸内晴美と井上光晴の関係は有名だったらしいが、私は全然知らなくて、今回の小説で初めて知った。若き日に読んだ彼女の小説に出てくる男が井上光晴だったのかというちょっとした驚きから「あちらにいる鬼」を興味深く読んだ。

この小説では瀬戸内寂聴と井上光晴の妻の2人それぞれの視点で光晴と光晴との関係を描いている。同じ男性との関係でもその内容は微妙に違っていてその対比が興味をそそる。

生々しい話なのにちっともそんな感じはせず、三人が平衡を保ちながら関係が続いていく。しかし現実には瀬戸内が井上との関係を絶つために出家し、二人の恋愛関係は終わる。(そのまま井上が亡くなるまで友人関係は続く)

この本を読んで何よりも感心するのは井上荒野が父と不倫関係にあった瀬戸内に話を聞き小説を書いていること。また、完成した小説を瀬戸内が絶賛していること。一般的にはしないであろうことだが、二人の女性が小説家だからこそできたことなのだろうと推測する。しかし、小説を書くということはそういうことなのだとも思った。

詳しい内容は本書をお読みいただきたいが、人は苦しみを乗り越えると強くなる。現在苦境にある場合も時間が問題を解決し、乗り越えられる時が来るのだと教えられる。


Commented by memmon at 2019-06-23 09:02
昨日、bloggerさんとこの荒野さんの本についてしばらくLINEをし合ったところでした。今東光が寂聴さんを坊主にする場面、今でも鮮明に憶えています。
阿波女の根性だと感じました。
荒野さんは寂聴が亡くなってから書くと思ってましたが、生きてるうちに書きましたねぇ。
しかも寂聴に聞きに行き、出来たら絶賛させる。
荒野さん、いや、光晴夫人の勝利なのかもしれないと感じましたよ。
歴史は長い時間をかけて繋がってますね。
Commented by Fiona at 2019-06-23 09:53 x
瀬戸内寂聴さんの作品では、岡本太郎の母である
岡本かの子の自伝を書いたものがとても好きです。
読んでいると、なぜだかすっきりしてきます。

この小説の経緯は知っていました。みんな、すごい
ですね。
寂聴さんの器の大きさのなかにみんな収まって
しまったのかもしれません。

Commented by koharu50 at 2019-06-23 10:28
> memmonさん
そうですねえ。普通は寂聴さんが亡くなってから書くでしょうね。でも、生前に書かれているのが逆に興味を呼びます。
またそれを絶賛する寂聴さんもあっぱれです。
光晴さんを巡る3人(寂聴さん、光晴夫人、荒野さん)の関係は決してドライなものだったとは思えませんが、筆致は湿っぽくなくて素晴らしいと思いました。
年月のなせる技なのか、3人の女性ができているのか?

素晴らしい女性達にこれだけ愛された井上光晴は幸せものだと思いました。
Commented by koharu50 at 2019-06-23 10:49
> Fionaさん
「かの子繚乱」ですね。
まだ読んでいないのて読みたいと思います。すっきりしたいですもの(笑)

「あちらにいる鬼」はすごい小説だと思いました。
私の読書は連鎖していくので、他の荒野さんの作品や寂聴さんの作品を読んでみることになると思います。
Commented by natural-larutan at 2019-06-24 08:53
面白そうな本ですね。
早速チェックしてみます。
「三人が平衡を保ちながら」という小春さんのコメントに、
男女のゴチャゴチャを超えた何かが描かれていそうな気がします。
Commented by koharu50 at 2019-06-24 17:26
> natural-larutanさん
そうですね。一般的な男女の三角関係とはちょっと違います。
でも、瀬戸内さんが出家してまで恋愛関係を断ち切ろうとしたのは相当相手が好きだったからです。そう感じました。
Commented by tomo-1207 at 2019-06-24 22:35
私も若い頃、瀬戸内晴美の小説をよく読んでいたので
興味あります。その三角関係は知りませんでしたが
実際の話だと思うと、一層読んでみたくなります。
Commented by koharu50 at 2019-06-24 23:17
> tomoさん
であれば絶対おすすめです。
以前に読まれた瀬戸内晴美の小説に登場する不倫相手が井上光晴氏だったとは。そしてその娘さんの小説に井上氏の奥様を含めた三角関係が描かれる。
面白いです。
by koharu50 | 2019-06-23 08:00 | | Comments(8)

自分の好きなファッションでいつもニコニコしていたい。おしゃれの法則?それも大切にするけれど、冒険も大好き。諦めちゃダメ、おしゃれはいくつになっても私を前向きにしてくれる。


by 小春