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「うつくしい日々」by 蜷川実花

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昨日から1週間だけ原美術館で開催される蜷川実花さんの写真展「うつくしい日々」を見に行った。

この写真展は実花さんのお父上で、昨年亡くなった演出家の蜷川幸雄さんの最期の1年半に撮影した写真を展示しているもの。

といっても実花さんやお父上が写っている写真ではなくて、最期の1年半に2人で見た、または実花さんが見た風景を撮影したものだ。

だから、劇的な光景は何もなくて、病室から見たと思われる風景や街の風景、幸雄氏が亡くなった頃に咲いていたであろう桜の写真など、何の変哲も無い写真が並んでいる。
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写真展の入り口には実花さんの文章が掲示されている。

「その日は、午後から撮影の仕事が入っていた。
父は今日、なくなるんだろうとわかっていた。
朝起きたら信じられないくらい空が青くて、あまりにも綺麗だった。
どうせ逝くならこんな日がいいよね、って思った」

「それを読んでからお部屋にお入り下さい」と受付の女性が言う。

写真にはそれだけで全てを表すものがほとんどで普通は説明などいらない。説明を読んでから写真を見て欲しいというのはこの写真展の特殊性を表していると思う。

蜷川実花さんの極彩色の写真は知ってはいたが、特別興味があったわけではない。

ただ、私が大学を卒業して最初に入ったのが演劇の世界だったので、蜷川幸雄氏については当然興味を持っていたし、尊敬もしていた。

特に彼が晩年率いていた、55歳以上でないとメンバーになれない「さいたまゴールド・シアター」。そのドキュメンタリーや本「蜷川幸雄とさいたまゴールド・シアターの500日ー平均年齢67歳の挑戦(平凡社新書)が大変面白く、「すごいなあ」と感心していた。

そんな蜷川さんの最期に纏わる写真展であればぜひみたいと思っていた。

実花さんの撮影した写真は前述したように平凡な日々の光景である。写真家にそんなことを言うのは大変失礼だが、ひょっとしたら素人でも写せそうな写真もある。

でも、見た後に心に広がる寂寥感と哀切・・・。ただ、どこかに暖かい視線も感じる作品群。

死んで行く父親の映像を撮るのではなく、一緒に見た風景を撮る。この稀有なコンセプトが一つ一つの写真に命を与えているのだと思う。

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写真集「うつくしい日々」by 蜷川実花(河出書房新社刊〕

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写真集、最後のページ。

「本当に誰だっていなくなるんだ。
こうやって生命がつながってきたから、私もここにいるんだ。
生まれて、死んできたから、今ここにいるんだ」

と、書かれている。

心に残る結びの言葉だ。

・・・・・・・・・・・・

平凡な発想ばかりしていてはダメだな、と思わされた静かな雨の一日。

「うつくしい日々」by 蜷川実花_f0378589_00184817.jpg
原美術館って初めて行きました。お屋敷町にある瀟洒な建物。展覧会を見た後にお庭を見ながらお茶するのはいいでしょうね。展覧会を見ずにお散歩がてらお茶だけすることも出来る。残念、今回は時間がなくて出来なかったけれど。

写真展について詳しくはこちら
原美術館についてはこちら


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Commented by bellko1213 at 2017-05-11 08:34
小春さま、おはようございます。
私も見に行きたいと思っていた写真展です。
残念ながら、帰国前に終わってしまうようなので行けないのですが。
こちらの写真集も、日本で手に取ってみたいです。
自分では行かれませんが、小春さまのブログのおかげで写真展の雰囲気が味わえてとてもうれしいです。
ありがとうございます。
Commented by koharu50 at 2017-05-11 10:51
ろばこさん、
写真展なかなか良かったですよ。

写真集ですがろばこさんが帰国したら私のを差しあげます。本が溜まりすぎるので読みたい人に読んでいただきたいです。
何らかの方法で連絡を取り合いましょう。
Commented by bellko1213 at 2017-05-12 07:39
小春さま、おはようございます。
写真集ですが、お言葉に甘えてしまってよろしいのでしょうか…。私、図々しいですね。
でもとても嬉しく、ありがたいです。
本当にありがとうございます。
小春さま、どうぞよい一日をお過ごしくださいませ。
Commented by koharu50 at 2017-05-12 07:50
ろばこさん、
ぜんぜん問題ないです。
そのほうが私も嬉しいです。
では。
by koharu50 | 2017-05-11 08:00 | 美しいもの | Comments(4)

自分の好きなファッションでいつもニコニコしていたい。おしゃれの法則?それも大切にするけれど、冒険も大好き。諦めちゃダメ、おしゃれはいくつになっても私を前向きにしてくれる。


by 小春